立ち読みコーナー

 

「はじめに」の全文をこちらから試し読みできます。尚、書籍版は縦書きです。

 

はじめに introduction

 

 私はかつて東証一部上場企業の戦略マーケティング部の統括責任者であった。数十名のスタッフとともに、常に10以上のプロジェクトを動かし、累計100億円を超える商品群を誕生させた。その後、同社を円満退職。約 18年間、実戦の中で磨き続けてきたマーケティングのノウハウを、独自のマーケティング戦略メソッドとして体系化。こうしたマーケティングの実戦経験を武器にマーケティングコンサルティング会社を設立した。

 

 以降、主に日本の中堅・中小企業に対して、マーケティングのサポートを行っている。創業から3年目には、すべてのクライアントの売上を向上させることに成功。現在、売上高 5000億円を超える大企業から、社員数名のベンチャー企業まで、日本全国に数多くの顧問先を持つ。

 

 指導してきた分野も、菓子メーカーから電力関連まで幅広い。また、全国の商工会議所、生産性本部、銀行、国立大学からもご招待をいただき特別講演を行わせていただいている。これが私、森本尚樹の経歴である。

 

 もしかしたらあなたは、私のことを「マーケティングに関する高度な教育を受け、大企業で実績を積み上げ続けてきたエリートだ」と思ったかもしれない。だが、そのイメージは本当の私の姿からはかけ離れている。

 

 私は MBAホルダーでもなければ、海外のビジネススクールで学んだわけでもない。大手の外資系コンサルティング会社で働いたこともなければ、中小企業診断士のような国家資格も持ち合わせていない。約 年間勤めていた会社は、入社したばかりの頃は社員わずか数十名の、いわゆる中小企業だった。店頭公開、東証二部上場を経て東証一部上場にいたるまで、自力で這い上がってきた会社に在籍していた。

 

 私は、名もない中小企業からの叩き上げだ。

 

 大学を卒業後、 年間病院に勤務。その後、ものづくりに関わりたくて、求人誌の小さな広告で見つけた、商品企画室スタッフの募集に応募して中途採用された。転職してから数か月後、意気揚々と参加した本社の企画会議の席上で、資料の中に書かれていた「市場」を「いちば」と読んでしまい参加者全員から失笑された。私はビジネスを学問として学んだことが一度もなく、マーケティングの「マ」の字も知らなかった。

 

 企画マンとして 年以上もヒット商品はゼロ。後輩にさえ企画商品の売上実績で追い抜かれていた。プロジェクトを任されれば 3000万円をドブに捨てあえなく解散したことも。   
 私は正真正銘の落ちこぼれだった。冒頭でご紹介した経歴が「表の経歴」だとしたら、これがまさに私の「裏の経歴」だ。

 

 もし、あなたが今、誰かにマーケティングを指導するような立場であるとして、私と同じような残念な裏の経歴を抱えていたとしたらどうするだろうか? 無かったことにする? とんでもない。私の最大の強みは、冒頭に書いた表の経歴などではない。この裏の経歴の中にある。

 

 私が心から自慢できること。それは、誰よりもたくさんの失敗を経験し、誰よりもたくさんの試行錯誤を自ら繰り返してきたことだ。そして、その実体験をベースにして、マーケティングを自分の言葉だけで語ることができるようになった。これが差別化された私の真の強みである。 あなたもぜひ覚えておいてほしい。弱みは強みに逆転できる。弱みを逆転して生まれた強みは、差別化された最強の強みだ。あなたの商品も、あなたの会社も、そして、あなた自身も安易に弱みを改善する必要などない。

 

 私の語るマーケティング戦略には、いわゆる「机上の理論」はひとつもない。何年もはいずり回り、失敗に失敗を重ね、考えに考えて辿り着いた真理だ。「バックグラウンドも、ブランドもない人間のマーケティング理論なんて学ぶに値しない」という方もいるだろう。それでいいと思う。 これまでに、私のマーケティング戦略を学び、「救われた」といっていただいた多くの方とお会いしてきた。それが私の進んできた道の先にあった答えだ。

 

 私はマーケティングのことがずっと分からなかった。そして、誰よりもマーケティングとは本当は何なのかを知りたかった。何百冊のビジネス書を読んでも、いくら試行錯誤を繰り返しても、いつまでもマーケティングのことはよく分からないままだった。でも、今はちがう。シンプルに、核心を突いて、自分の言葉で「マーケティングとは何か?」について語ることができるようになった。 私は「マーケティングのことがよく分からない」という方のために、ビジネスがうまくいなかくてもがいている方のために存在する。私のマーケティング戦略は、常にあなたと同じ目線にある。

 

 もしかしたらあなたは、本書を「ビジネスやマーケティングのことがやさしく楽しく学べる入門書だ」と思って手にされているかもしれない。たしかに、平易な言葉で書いているため、ごく初歩的な内容に思えるだろう。だが、残念ながら本書は入門書ではない。マーケティングをあなたの武器にするための実戦の手引きだ。 マーケティングは広く浅く学んでも実戦では役に立たない。だからといって、米国発の最新のマーケティング理論や、大学で教えているような高度なマーケティング理論を学んでも、実戦では応用が難しい。 マーケティングは、ごくシンプルな原理原則を学び、それを深く、どこまでも深く、自ら考え実行してみることであなたの武器へと生まれ変わる。売れなかった商品の売上を上げたり、ヒット商品を作ったりすることができるようになるのだ。本書ではその具体的な方法をあなたに伝授する。 さあ、前置きはこのくらいにして、さっそく実戦マーケティングのスキルを獲得する冒険の旅に出よう。

 

森本尚樹